2008年06月02日

又吉栄喜『呼び寄せる島』

又吉栄喜『呼び寄せる島』


又吉栄喜さんの最新刊『呼び寄せる島』を読んだ。


600ページあまりが、じつに短く感じられた。


小説から離れている間、常に小説空間に戻りたい気持ちがあった。



『琉球新報』の夕刊に、2005年4月から約1年半連載された小説だから、


知っている人も少なくないだろう(ただし、連載時の題名は「脚本家の民宿」)。



新聞連載小説なので、所々間延びした展開もないわけではなかったが、


それもまた、沖縄の時間や空間を思い起こさせて変に気持ちがよかった。


又吉さんの出世作『豚の報い』を思わせる消極的な主人公「俺」が、


登場人物たちに生活をかき回されながら少しばかり積極に転じつつ、


しかし結局・・・という「三四郎」ばりの青春小説である。



「芥川賞作家 初の大ロマン」という帯のキャッチコピーはお愛嬌だが、


「普通の人間などどこにもいない。


パラダイスに似て非なる地で、人間の果てしない面白さが見えてくる。」


という帯文は、この小説のおもしろさをよく言いあらわしている。


裏表紙の帯文、


「人生百年はあっという間だ。


退屈で戦争したくなったら ピッケル持って山に登れ。」


は、いささか悪ノリかもしれない。


であれば、むしろ、


「退屈で戦争したくなったら 小説を持って木陰に行け。」


で、よかったんじゃないだろうか?



風の通る木陰で、一日中ぬるんとぅるんしながら読みふけりたい小説!


お勧めです。



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この記事へのコメント
この小説は今度本屋に行ったら 是非買います~

それと、あのオッサンが府立国際児童文学館を どうやら廃館に追い込むようですね。これは弱い者いじめにほかなりません。切るべきところを切らずに、切りやすいとことから切るという稚拙なやり方...。

司馬遼太郎先生が存命ならば、同じく憤慨なさったでしょうに....。
Posted by ロボコン太ロボコン太 at 2008年06月03日 15:29
また感想教えてください。

70万冊の蔵書受け入れ予定の地元として、複雑なものがあります。
稚拙・拙速のオンパレードには、開いた口のふさがる暇がありません・・・

ほんとうに識者がいなくなりました。おかげで○○の野放し状態です。
Posted by び んび ん at 2008年06月03日 22:24
お返事が遅くなる場合があります。あしからず。
 
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