2008年03月21日

倭、輪、そして和・・・(「鹿男あをによし」の余韻に浸りつつ)

かつて倭の国と呼ばれたこの地には八百万の神が住んでいたという。


人々はそれを崇(あが)め、自然とともに、生きていた。




ご存じ、「鹿男あをによし」のオープニングナレーションである。


「八百万」を「やおよろず」と読まず「はっぴゃくまん」と読む、


そのことの是非は、ここでは問わない(ぼくは、それでかまわないと思う。)


「自然」への畏怖・畏敬の念が「鹿男」にどのように描かれていたか、


それも、あらためて考えてみたいと思っている。


ここでは、「倭の国」について考えてみたい。



というのも、堀田イトという、現代の若い女性にしては珍しい名前、


その「イト」という名前に込められた「意味」として、


邪馬台国以前にあったという「イト倭国」の存在を意識する期間、


その大きな前提として、ナレーション冒頭の「倭の国」を考えていた時期が長かったからだ。


ただ、じっさいには、「イト」という名は卑弥呼の後継者となったイヨ(トヨ)から来ているだろうと結論づけた


そのことで、ドラマ「鹿男」の最初に刻印された「倭」という文字(言葉)が、宙に浮いてしまうようにも思える。


倭、輪、そして和・・・(「鹿男あをによし」の余韻に浸りつつ)

(「鹿男の木」 撮影:chief )



「鹿男」の随所に、ストーリーの流れからすれば、むしろ唐突に、


何度も「月」の映像がはさまれることには、注目していた。


それも、物語内の時間が流れているはずなのに、決まって「満月」なのだ。


また、「サンカク」探しの過程の中で、三角縁神獣鏡が浮上するに当たって、


「三角」でありながら(と呼ばれながら)「丸(円)」であるその形状が、


ただ、「サンカク探し」の謎解きを深めるためとは思えなかった。



つまり・・・


中井貴一のナレーションで発音される「倭」は、「倭」という表意(意味)を欠き、


何よりもまず、「WA(わ)」という表音(音)として視聴者に届けられるということに、


いささか以上の関心が払われたのである。



その時、「わ」とは、「」であるとともに(むしろそれ以上)に、


」であり、そして「」を含意しているのではあるまいか。


そんなふうに思ったのである。



じっさい、「目」と呼ばれる三角縁神獣鏡を用いた儀式(第10最終話)で、


祭器となった三角縁神獣鏡から立ち上がったのはひとつの丸い「球」であり、


それは、「月」のエネルギーを吸収する形で(と見ることができた)、


地中深くにいる大ナマズを「鎮め」にかかるのである。



直接的には、第9話の終わりに積極的に(!)誘い出した藤原先生と、


並んで歩く小川先生が、じっと時間をかけて見つめた「月=満月」が、


この時、その意味を明らかにするのであるが。


(そして、それまで何度も登場した月たちが重層的にフラッシュバックする。


満月の画像は「鹿男あをによし」公式HPの「スペシャルコンテンツ」に、壁紙のひとつとして収められている。


それほどトピカルなアイテムとして「満月」があったと考えてよいだろう。 参照:なおみさんの「ブルー・カフェ」


また、「満月=十五夜」への考察は、「渡る世間は愚痴ばかり」のikasama4さんがなさっています。


いつもながらの鋭い切れ味と、おもろいイラスト^^見事です!)



月を、わたしたちの言葉では、「月の輪」とも呼ぶ。


そのような「月」、それも満ち足りた姿の「輪の月」にかけて、


ドラマは、その姿に「和」を、すなわち地球の永続的な平和を祈ってはいなかったか?



だからぼくは、オープニングナレーションを、このように書き換えてもいいのだと思う。



かつて和の国と呼ばれたこの地には八百万の神が住んでいたという。


人々はそれを崇(あが)め、自然とともに、生きていた。




人と人とが出会う。


そのことなしに、新たに人が生まれ、人の世が続いていくことはない。


最終場面で小川先生が用意した「指」は、


そのような「出会い」と「誓い」の表象であった。


そう。小川先生が藤原先生に「指輪」を渡せるかどうかが問題なのではない。


小川孝信が、指輪という「輪」を、そして「和」の約束を用意した時点で、


また新しい人が生まれて、そしてこの世界が続いてゆく、


その示唆は十分に果たされただろうからである。



いや、それは、すでに2人が若草山の山頂から、


目の前に広がる「地球」というグローブ(球)をはるかに遠望したとき、


約束されていたことなのかもしれない・・・


その意味で、かりんとう藤原道子が言った、


「ここで一緒に夕陽を見たときから」2人が「付き合っていた」という言葉は、


じつは誰よりも正しく、事態を見抜いた言葉であったのかもしれない。



「倭の国」とは、「輪の国」であり、そして「和の国」である。


大地震という災厄を描きつつも、それを「鎮め」る結末を用意し、


そして、新たな未来に向かってこの地球がつづいてゆく、


ドラマ「鹿男」には、そのような「祈り」が込められていたと思う。



そのような「(過去から)未来への地球」を、ただ「人間」だけの世界にとどめることなく、


鹿や鼠や狐(や狸^^)たちにとっても(とってこそ)大切な空間だと示唆したところに、


ぼくは、ぼく自身が、このドラマがほんとうに好きであった理由を見いだすのである。



おそらく100回目を軽く越えた「鹿男」のサントラ、そこに流れる「曲」に鼓舞されつつ、


(「マイCDです、先生!」は、もうやりませんけれど・笑)


やはりそのメインテーマは「和」(平和)であるのだと思われるサウンドに魅了されながら、


そんなことを考えている、6(鹿=ろく)時6(鹿=ろく)分ごろ。あ、6(鹿)フンかもしれない(^○^))




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この記事へのコメント
びんさん、こんばんは。
画像はこちらでゲッツで来ますよ。
http://wwwz.fujitv.co.jp/awoniyoshi/index.html
あと動画や色々あるみたいですね。
Posted by なおみ at 2008年03月21日 19:49
なおみさん、さっそくありがとうございます!
いやほんとに、公式HPもほとんど見ずに、
記事を書いている無謀さには、自分でもあきれますが(汗)

ただ・・・公式発表は「隠す」ためにあるとも思っていますので^^
Posted by び んび ん at 2008年03月21日 20:15
どこにコメントしよう…と思いつつ、ここへ!
夕べは私もリチャード状態で、
「鹿男」はまだもう一話あった!と変な夢まで見ちゃいました。
(<どんだけ好きなんだか…
「輪」は、また鎮めの儀式が永遠に続いて行く「環」でもありますね。
人の世をずっと見続けてきた鹿様にも、
藤原は強敵だったことでしょう(笑
私には重さんがラスボス状態でしたが…。
Posted by 夕来 at 2008年03月21日 22:40
TBとコメント、ありがとうございました。私も、リチャード状態です。
普段、TVドラマはブログupしないのですが、このドラマは好きでしたね。
なぜなんだろう...。

『鹿男』は、多少トウがたった少年の成長物語だったんですね。

『付き合っていた』というのは、正しく事態を見抜いてたんですか?
そ、そうなんですか?そうなんですね。
藤原くんは天然でありながら、本質をついた言葉を吐く人ですからね。

それにしても、サントラ欲しくなりました。
Posted by あん at 2008年03月21日 23:08
びんさん。ドラマ最終回迎えてしまいましたね。
たくさんの記事色々読ませていただきました。すごく丁寧なまじめネタから、ひどくギャグなネタまで、毎回楽しんで読んでましたよ(笑)
ブログ名まで鹿男になってしまったのはかなりうけました。。
これからも記事書き続けてください!
Posted by ヤスキ at 2008年03月21日 23:28
なるほど、和ですか。
私は月の満ち欠けに「目」を思い浮かべていました。
「目」が開いた時=満月の時

銅鏡=「目(メ)」の力が開かれ
それを使う者は「女(メ)」であると。

まぁこういう言葉遊びで最後まで楽しませてもらいました。


そういえば、日テレで「妖怪大戦争」やってました。

主人公は「麒麟送子」に選ばれるようで。

やはりここも「鹿」ですね( ^▽^)
Posted by ikasama4 at 2008年03月21日 23:31
>夕来さん

す、すみません、どこにコメントしていいかわからないブログで(笑)

その夢、いいですね。で、ちょっと悲しい・・・
きっとまた、11話、実現しますよ!そう思います。

そして、そうですね。たしかに「環」です。
ありがとうございます。補足していただいて。

重さんに成り代わってお礼申し上げます(なにそれ?笑)


>あんさん

リチャード状態の人、ひとり発見(笑)
ぼくもドラマのこと書いたのはじめてですよ。
そりゃそうか、「鹿男」ドラマ探偵団としては(^-^;

多少トウが立った少年はともあれ・・・^^;
成長物語であることはまちがいないと思います。
そして、それを見るわれわれも、たぶん成長していた(なんてね・w)

かりんとうの「本質衝き」は、鹿のお墨付きありますから^^

サントラ、どうぞどうぞ!損はさせません(キャニオンの使い番^^v


>ヤスキさん

ありがとうございます!何よりです。

じつはすごくマジメなえーかげんネタと、
ひどくギャグなうんうん考えて書いたネタ、
それらで構成されております(笑)

よろしければまたどうぞおつきあいください!


>ikasama4さん

いえいえ、言葉遊びこそが制作者の「糸」ではないかと、
たぶんグッズ購入の糸を引かれながら思うのであります^^

「目」・・・やはり三輪山は響いていますか!?

そして目の力といえば・・・メカ?(すみません・笑)

ずいぶん考えさせていただきましたよ。感謝です。
で、あえて、読みに行かずに記事書いたこともありました。

よ、妖怪大戦争!・・・不覚^^;

いやはや、それこそ其の鹿ですね。
Posted by び んび ん at 2008年03月22日 00:26
おくればせがら

う〜〜んとうなりつつ読ませていただきました
とちゅうでikasama4さんちもよってきました

本当におもしろかったです鹿男

ひょうたんからコマみたいなかんじで期待以上のおもしろさ

エンディングに曲のみで鹿をはしらせたあのスタッフのセンス
穏やかな奈良の景色
余韻があります

狐や鹿にはなしかけてしまいそうな自分がいます

ねずみは・・・・話しかける前ににげるだろうな
Posted by むぎこ at 2008年03月22日 10:36
>う〜〜んとうなりつつ読ませていただきました

む、むぎこさん、腹痛?^^

いやほんとに、ひょうたんからコマというか、ひょうたんからシカというか(笑)

走らせましたねー、鹿!
あのあと、エキストラ代が大変だったようで(爆)

>ねずみは・・・・話しかける前ににげるだろうな

キツネも逃げるような気がします(笑)

シカは、鹿せんべいあればだいじょうぶかな^^
Posted by び んび ん at 2008年03月22日 11:46
八百万は「やおよろず」です!!毒されないでください。
Posted by 通りすがり at 2008年04月02日 00:36
特に返答の必要も感じませんが、成り行き上。

「はっぴゃくまん」は万城目さんの用例の踏襲です。
ちなみに『鴨川ホルモー』では、「八百万」の読みに、
「はっぴゃくまん」が2回、「やおよろず」が1回宛てられています。

毒される対象は、ドラマですか?それとも小説の作者?
いずれにせよ、「やおよろず」という読みひとつに固執するのなら、
それ以外に(以前に)守るべき対象は数限りなくあると思いますし、
そこまでする必要性を感じない以上、ぼくは「はっぴゃくまん」で十分だと思います。
Posted by び んび ん at 2008年04月02日 00:50
お返事が遅くなる場合があります。あしからず。
 
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