2008年03月30日
「鹿男あをによし」第3回探訪報告(5)朱雀門に鹿の声を聴く
とっぷりと暮れてゆく夜の底で、
朱雀門の前にたたずんでいると、
鹿の鳴き声が聞こえてくるようでした。
もちろん、ここは鹿のいる場所から何キロも離れており、
ほんらい、鹿の鳴き声が聞こえる場所ではありません。
そう。「鹿男あをによし」の最終回、
「お前、寂しいか?」と小川先生に問われ、
ただひと声、「びい」と鳴いた、あの鳴き声です。
(撮影:chief )
『ホルモー六景』『鴨川ホルモー』の順に読み進めて思うことは、
(まだ、『鹿男』には到達していないのです。やれやれ・・・)
この作者の日本古典に対する、ある程度の知識。
『鹿男あをによし』にも、それが反映していないはずはありません。
ただしかし、神無月(冬)は、季語である鹿(秋)とは、そぐわない。
その点、小説でどのような処理をしてくるのか、たのしみです。
おそらくは、秋の寂しさをうたってもっともよく知られた読人知らずの歌、
おく山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき
ではなく、(これは小倉百人一首にもとられていますね。5番目に。
その時藤原定家によって、猿丸太夫の歌ということにされるわけですが)、
松尾芭蕉の句、
びいと啼(なく)尻声悲し夜の鹿
で来るのではないのかな、なんて思ったりもしています。
(↑小説も、読む前からとことん楽しもうと思っている人^^)
もちろん百人一首歌も、「おく山」は春日山の奥山ですし、
その意味で飛火野の背景としては、ぴったりなのですが。
そして、すでにぼく自身「鹿男」の物語は、時空を超えると予想してもいるのですが。
それは、言い換えれば、「季節を超える」ということでもありますから。
ただ、やはり、明示・明言された「秋」と、鹿声とが、いまひとつしっくりこない。
そんなわけで、ぼくの耳に聞こえた鹿の鳴き声も「びい」。
そういえば、芭蕉には、
武蔵野や一寸ほどな鹿の声
という句もありました。
本来目に見えないはずのものを、目に見えるものとして吟ずる。
これこそ、松尾芭蕉という俳諧師(はいかいし)の真骨頂でした。
一寸(約3センチ)という短い声を示すことで、
長い長い悲しみを表現しえた、稀有の句だと思います。
【付記】
第3回探訪報告が5つまとまりましたので、
1週間以内にTBを送っていただいた方に、
(コメント欄等読ませていただいた上で)
トラックバックをお送りしています。
ご支障があれば、お手数ですがお知らせください。
Posted by び ん at 11:06│Comments(12)
│テレビドラマ評論(鹿男あをによし・Nのために・リバースなど)
この記事へのトラックバック
鹿男あをによし最終話小川は、堀田から受け取った”目”を草の上に置く。そして、ナマズを鎮めるためのすべての儀式が無事に終わる。翌日、盗難疑惑は解けたものの、学校にいられなく...
「鹿男あをによし」最終話【日々“是”精進!】at 2008年03月30日 13:05
さぁ 最終回ですよ。
「さぁ 儀式を始めようか」 と鹿(山寺さん)
先週の奇行がアレだった リチャードが同席してるのは 問題ではないんですか?
そう言えば 何で牝鹿なの?(笑)...
「さぁ 儀式を始めようか」 と鹿(山寺さん)
先週の奇行がアレだった リチャードが同席してるのは 問題ではないんですか?
そう言えば 何で牝鹿なの?(笑)...
鹿男あをによし感想【murmur】at 2008年03月30日 13:53
鹿男あをによし、最終話。
いよいよ儀式が始まるみたいです!
三角縁神獣鏡は水を入れるものなんですね。
久々に大塚寧々さんが出てきました。
卑弥呼役ってのは難しそうですねw...
いよいよ儀式が始まるみたいです!
三角縁神獣鏡は水を入れるものなんですね。
久々に大塚寧々さんが出てきました。
卑弥呼役ってのは難しそうですねw...
鹿男あをによし 最終回 「二つのキス~冒険の終わりが恋の始まり」【二度あることは三度ある!?】at 2008年03月30日 19:13
次の儀式まで180年。私はこの目と共に生きる。小川が使い番に選ばれた理由。勾玉だよ。先生。使い番になる男は、いつも東からやって来る。そして、必ず勾玉を身につけているんだ...
【鹿男あをによし】最終回と統括感想【見取り八段・実0段】at 2008年03月30日 21:25
先日 ≪鹿男あをによし≫最終話が終わって
記事に写真UPしました ≪アビィ・ロード≫でしたけども
びんさんが解決してくださいました〜〜〜
なんと 万城目学/著≪鴨川ホルモ...
記事に写真UPしました ≪アビィ・ロード≫でしたけども
びんさんが解決してくださいました〜〜〜
なんと 万城目学/著≪鴨川ホルモ...
鹿男アビィ・ロード【ice-coffee】at 2008年03月30日 21:59
橿原神宮前駅を東に400m。
孝元天皇「剣池嶋上陵」をめぐる「剣池」。
孝元天皇「剣池嶋上陵」をめぐる「剣池」。
鹿男あをによし/総括【KTN:神奈川辺境交通】at 2008年03月30日 22:09
ついに最終回。
ここに来て恋話がメインだったらどうすっかって気はしてましたが、あれくらいはしかたないかな。
ここに来て恋話がメインだったらどうすっかって気はしてましたが、あれくらいはしかたないかな。
『鹿男あをによし』最終話(第10話)「二つのキス〜冒険の終わりが恋の始まり」メモ【つれづれなる・・・日記?】at 2008年03月31日 00:00
この最終回にまで「そう来たか!」と思わせる手法には脱帽!毎回楽しませて貰いましたが、大満足の最終回でした。「さぁ、儀式を始めよう」。。。次の鎮めの儀式までは180年もあるのね...
『鹿男あをによし』 最終回【美容師は見た…】at 2008年03月31日 00:35
打ち間違えではありません(笑)『鹿男あをによし』最終回の追記にしたんですが、それでは勿体無くて、追加記事にしちゃいました(^_^;)『鹿男』にハマッた方が多くて、本当に楽しめたドラ...
『指揮男あをによし』【美容師は見た…】at 2008年03月31日 00:36
「俺もときどき、お前を美しいと思うときがあるよ」
「ありがとう」
あぁ…楽しかった。
もうこの一言に尽きますね。
テンポの都合で省略されたと思われるネタが結構あったけど、...
「ありがとう」
あぁ…楽しかった。
もうこの一言に尽きますね。
テンポの都合で省略されたと思われるネタが結構あったけど、...
鹿男あをによし 第10話(最終話)「二つのキス~冒険の終わりが恋の始まり」【特撮警備隊3バるカんベース~GOLD LUSH~】at 2008年03月31日 02:49
儀式は無事に行われ、地震が収まる。
『鹿男あをによし』最終回【ド素人日記】at 2008年03月31日 16:55
寂しい~、、、これで終わりなんて。 [E:crying] 最終回は、鹿が出てくる
鹿男あをによし・最終回「二つのキス~冒険の終わりが恋の始まり」【山吹色きなこ庵・きままにコラム】at 2008年03月31日 22:53
いやぁ。冬のドラマ面白い!と思ったのは、実はこれと喜多善男
くらいですかね。
あとはちょっと惰性で見てる感じがありました。
二つとも原作ありで、とても短い小説なので正直言...
くらいですかね。
あとはちょっと惰性で見てる感じがありました。
二つとも原作ありで、とても短い小説なので正直言...
鹿男あをによし 最終回【Simple*Life】at 2008年04月02日 13:35
この記事へのコメント
こんにちは。
朱雀門と可愛い鹿に癒されました^^
そして いつもながらの素敵な考察に 感嘆いたしました。
TB ありがとうございます!
私も 原作を読んでみたいと思っています(いつか 笑)
朱雀門と可愛い鹿に癒されました^^
そして いつもながらの素敵な考察に 感嘆いたしました。
TB ありがとうございます!
私も 原作を読んでみたいと思っています(いつか 笑)
Posted by kumu at 2008年03月30日 14:09
ありがとうございます。
可愛い鹿は、同行したカメラマンの写真です。
(カメラに凝った男ですから、カメラマンでいいですよね^^)
原作、どうぞ読んでください。
ぼくは、ホルモー2作がそろそろ終わり・・・でもまだエッセイが1冊あるんだよなぁ(笑)
可愛い鹿は、同行したカメラマンの写真です。
(カメラに凝った男ですから、カメラマンでいいですよね^^)
原作、どうぞ読んでください。
ぼくは、ホルモー2作がそろそろ終わり・・・でもまだエッセイが1冊あるんだよなぁ(笑)
Posted by び ん at 2008年03月30日 20:51
鹿は秋の季語か。。。
そう言えば、鹿と秋と言えば花札を思い出すヤクザな私。。。(-_-;)
あの鹿が一声鳴く場面は何となく物悲しかったですねぇ。
思い出したら、また最終回を見たくなっちゃった。
そう言えば、鹿と秋と言えば花札を思い出すヤクザな私。。。(-_-;)
あの鹿が一声鳴く場面は何となく物悲しかったですねぇ。
思い出したら、また最終回を見たくなっちゃった。
Posted by くう at 2008年03月30日 21:31
たぶん「鹿男」最終回を見ていらっしゃる、くうさんへ^^
鹿は秋なのですが、「冬の鹿」という季語もあるようで。
季語って、ほんとにまったくちっともわかりません(汗)
イノシカチョウ・・・って、ジチョウカチョウみたいですね(笑)
鹿は秋なのですが、「冬の鹿」という季語もあるようで。
季語って、ほんとにまったくちっともわかりません(汗)
イノシカチョウ・・・って、ジチョウカチョウみたいですね(笑)
Posted by び ん
at 2008年03月30日 21:51

ステキ~朱雀門
儀式が今にもはじまりそうなお写真ですね~
あ~行ってみたいわ。。
いつも深い考察に なるほどーと、うなっております~^^
楽しみにしてますよん~
儀式が今にもはじまりそうなお写真ですね~
あ~行ってみたいわ。。
いつも深い考察に なるほどーと、うなっております~^^
楽しみにしてますよん~
Posted by ice at 2008年03月30日 22:10
ありがとうございます~
たしかに闇は深かったですね^^
考察も、もっともっと深くしませんと^^;
ステキ~探偵団
と言っていただけるようにガンバリマス(笑)
たしかに闇は深かったですね^^
考察も、もっともっと深くしませんと^^;
ステキ~探偵団
と言っていただけるようにガンバリマス(笑)
Posted by び ん
at 2008年03月30日 22:22

いいえ②~。
夜の朱雀門凄くキレイですね~。
鹿の写真も今にもしゃべりだしそうです!
夜の朱雀門凄くキレイですね~。
鹿の写真も今にもしゃべりだしそうです!
Posted by さくら at 2008年03月31日 00:05
ありがとうございます!
朱雀門の写真は、撮った人のウデですね。(撮影:ぼく)
で、鹿の写真は鹿が可愛かったのでしょう。(撮影:同行者)
・・・いえ、その反対かもしれません^^;
朱雀門の写真は、撮った人のウデですね。(撮影:ぼく)
で、鹿の写真は鹿が可愛かったのでしょう。(撮影:同行者)
・・・いえ、その反対かもしれません^^;
Posted by び ん
at 2008年03月31日 00:33

いつもTBありがとうございます。
私は見ていたドラマの撮影された場所を
歩いてみるということをしたことがないので、
羨ましい限りです。
楽しそうだなぁ~(*´∀`*)
びんさんの耳に「ぴい」という鹿の泣き声が聞こえたのなら、
鹿さんが寂しがっているということですね。
もう少しで鹿さんが話しかけてくれるかも??(笑)
私は見ていたドラマの撮影された場所を
歩いてみるということをしたことがないので、
羨ましい限りです。
楽しそうだなぁ~(*´∀`*)
びんさんの耳に「ぴい」という鹿の泣き声が聞こえたのなら、
鹿さんが寂しがっているということですね。
もう少しで鹿さんが話しかけてくれるかも??(笑)
Posted by にな at 2008年03月31日 16:48
こちらこそ、ありがとうございます。
ぼくも、ドラマの舞台を歩いたことなんて
(少なくとも、そのために行って)
はじめてなのです。
でも・・・楽しいですよ(^-^ゞ
あ、そうですね。
あと何回か行けば話しかけてくれるかも!
がんばろ(笑)
ぼくも、ドラマの舞台を歩いたことなんて
(少なくとも、そのために行って)
はじめてなのです。
でも・・・楽しいですよ(^-^ゞ
あ、そうですね。
あと何回か行けば話しかけてくれるかも!
がんばろ(笑)
Posted by び ん
at 2008年03月31日 21:53

こんばんは。
TBとコメント、ありがとうございました!
朱雀門も、鹿さんの写真も美しいですね~^^
旅の疲れが癒されたような気がします。
私は『鹿男』を読んでしまったので、お次は『ホルモー六景』に
手を出してみようかと企んでおります…
TBとコメント、ありがとうございました!
朱雀門も、鹿さんの写真も美しいですね~^^
旅の疲れが癒されたような気がします。
私は『鹿男』を読んでしまったので、お次は『ホルモー六景』に
手を出してみようかと企んでおります…
Posted by つっぺ at 2008年04月01日 23:35
こんばんは。
こちらこそ、お疲れのところ、ありがとうございました。
朱雀門に鹿。録画でぜひご覧になってください!
あ、それから、『ホルモー六景』より『鴨川ホルモー』が先のほうがいいです。
ぼくは、『ホルモー六景』を先に読み、結局『鴨川ホルモー』のあとに、もう一度読むことになりました。その順番のほうが、何倍も感動できます。
老婆心ながら^^
こちらこそ、お疲れのところ、ありがとうございました。
朱雀門に鹿。録画でぜひご覧になってください!
あ、それから、『ホルモー六景』より『鴨川ホルモー』が先のほうがいいです。
ぼくは、『ホルモー六景』を先に読み、結局『鴨川ホルモー』のあとに、もう一度読むことになりました。その順番のほうが、何倍も感動できます。
老婆心ながら^^
Posted by び ん
at 2008年04月02日 00:26

お返事が遅くなる場合があります。あしからず。