2008年03月22日
リチャードの夢、小川先生の異界、ドラマ「鹿男」の空間
リチャードが鹿を呼ぶシーンについて書きました。
第2話で小川先生がするウルトラマンの変身ポーズの番組内パロディですね。
で、そのことについて、もう少し。
いわば、今度はリチャードを主人公としたスピンオフでしょうか(笑)
鹿たちを呼ぶリチャードのシーンの最後、
カラースクリーンをかぶせられていた画面が、
一瞬、ナチュラルな色彩の画面に変わりました。
エンディングテーマのタイトルバックを見慣れた目にも鮮やかに。
ふと思うのです。
第9話から第10話にかけてのリチャードの役割とかかわり合わせて。
つまり、鹿男をめぐるストーリーの一切が、リチャードの見た夢ではないか、と。
あまりに考古学に没頭しすぎたゆえに、卑弥呼の鏡を夢見た男の夢ではないか、と。
第10話、先回まであれほど駄々をこねたリチャードは、じつにおとなしかった。
そして、「鎮めの儀式」を見る目は、その場に居合わせた誰よりも真剣だった。
つまり、「考古学者として、どうか鎮めの儀式を見せてください」と言った言葉に、
おそらくうそ偽りはなかった。・・・
鹿が話し、鼠が人間を指図する。
第1話からずっと「鹿男」を見ているぼくらは慣れてしまったけれど、
それは、改めて考えれば、実にシュール(超現実)な情景。
つまり、夢の高揚から現実に戻されたリチャードが、
鹿たちを相手にしているとき、ふと我に返ったのでは・・・
あるいは、小川先生が奈良に来て以来、空間をおおった色スクリーン。
赤であったり、黄色であったり、そのカラーは、さまざまでしたが。
(そして、第10話に至るに連れて、ナチュラルカラーが多くなってもいたのですが・・・
それは、大地震と富士山噴火という大災厄の予感に覆われた「日本」の気分を、
第一義的に「画面」として可視化していたのでもあったのでしょうか。
ところで、「鹿男」の色彩に注目したのは、たとえば、しでおさんの「楽屋」。
詩と論を兼ね備えた、不思議な感触のステキなブログです。)
つまりそれは、1ヶ月という短い間に、小川先生の見た白日夢かもしれない。
【補記:当初「2ヶ月」と誤記していたのを書き直します。
つまり、「1ヶ月」というのは、そのものズバリ「月のひとめぐり」ということですね。】
もちろん、それらは、そう思えば思えるという程度に暗示されているに過ぎません。
いや、こう書きながらも、「それはさすがに深読みだろう」とささやく自分がいるのですが。
東京から奈良へと空間移動をする小川先生(地震の頻発という異様な時間の中を)。
ふとまぎれこんでしまった異界の中で、一頭の鹿に話しかけられ、「夢」がはじまる。
その証拠(?)に、その「夢」の中からやってきた藤原道子は、鹿を幻視するような空間を運んできた。
つまり、最終場面でかりんとう藤原を追い見る小川の目に、ふと見える「鹿」のことです。
そのような、幾重にも重なりあった空間の不思議さ、
そして、それらを移動するわれわれもまた、じつは非日常的な行為をくり返しているのだということ、
そんなことを、第10話という「物語の出口」で、ドラマ制作者は仕掛けたかったのかもしれない。
そんなふうにも思うのです。少なくとも、そんなふうに読み取っていい。
言い換えれば、ドラマから現実の間に、容易には戻れない迷路を用意したのかもしれない。
最終場面にあらわれた「鹿」(の幻影?)は、そのことを伝えたかったのではなかろうか、と。

(撮影:chief )
じつにじつに手の込んだ仕掛けがほどこされている。
その点だけは、このドラマにかんして間違いないことでしょう。
そして、じつはまだ誰にも解かれていない仕掛けも、たぶんドラマ「鹿男」にはある。
むしろ少数のユーザーたち(ドラマ「鹿男」の場合は視聴者ということになります)が、
「自分のためにつくられた」と信じ込むような作品は、往々にしてそういうものです。
たとえば、登場してからしばらくの間、村上春樹がそうでした。
しかし、いまや彼は、世界中でもっとも読まれている作家のひとりです。
つまり、「時代が彼に追いついた」のですね。
「鹿男」の場合、まだちょっと「時代」が追いつくのに早かった。
いや、早い、遅いというのは、単なるモノサシの当て方にすぎません。
しかし、そこに含まれた「何か」に、じつに多くのユーザーたちが反応した。
【補記:「ユーザーたち」を「ヘビーユーザーたち」と言い換えておきたいと思います。】
それこそが、今期ネットでもっとも盛り上がったといわれるこの作品の、
「視聴率」と「ブーム」の大きな乖離現象を解く鍵なのではないでしょうか。
第2話で小川先生がするウルトラマンの変身ポーズの番組内パロディですね。
で、そのことについて、もう少し。
いわば、今度はリチャードを主人公としたスピンオフでしょうか(笑)
鹿たちを呼ぶリチャードのシーンの最後、
カラースクリーンをかぶせられていた画面が、
一瞬、ナチュラルな色彩の画面に変わりました。
エンディングテーマのタイトルバックを見慣れた目にも鮮やかに。
ふと思うのです。
第9話から第10話にかけてのリチャードの役割とかかわり合わせて。
つまり、鹿男をめぐるストーリーの一切が、リチャードの見た夢ではないか、と。
あまりに考古学に没頭しすぎたゆえに、卑弥呼の鏡を夢見た男の夢ではないか、と。
第10話、先回まであれほど駄々をこねたリチャードは、じつにおとなしかった。
そして、「鎮めの儀式」を見る目は、その場に居合わせた誰よりも真剣だった。
つまり、「考古学者として、どうか鎮めの儀式を見せてください」と言った言葉に、
おそらくうそ偽りはなかった。・・・
鹿が話し、鼠が人間を指図する。
第1話からずっと「鹿男」を見ているぼくらは慣れてしまったけれど、
それは、改めて考えれば、実にシュール(超現実)な情景。
つまり、夢の高揚から現実に戻されたリチャードが、
鹿たちを相手にしているとき、ふと我に返ったのでは・・・
あるいは、小川先生が奈良に来て以来、空間をおおった色スクリーン。
赤であったり、黄色であったり、そのカラーは、さまざまでしたが。
(そして、第10話に至るに連れて、ナチュラルカラーが多くなってもいたのですが・・・
それは、大地震と富士山噴火という大災厄の予感に覆われた「日本」の気分を、
第一義的に「画面」として可視化していたのでもあったのでしょうか。
ところで、「鹿男」の色彩に注目したのは、たとえば、しでおさんの「楽屋」。
詩と論を兼ね備えた、不思議な感触のステキなブログです。)
つまりそれは、1ヶ月という短い間に、小川先生の見た白日夢かもしれない。
【補記:当初「2ヶ月」と誤記していたのを書き直します。
つまり、「1ヶ月」というのは、そのものズバリ「月のひとめぐり」ということですね。】
もちろん、それらは、そう思えば思えるという程度に暗示されているに過ぎません。
いや、こう書きながらも、「それはさすがに深読みだろう」とささやく自分がいるのですが。
東京から奈良へと空間移動をする小川先生(地震の頻発という異様な時間の中を)。
ふとまぎれこんでしまった異界の中で、一頭の鹿に話しかけられ、「夢」がはじまる。
その証拠(?)に、その「夢」の中からやってきた藤原道子は、鹿を幻視するような空間を運んできた。
つまり、最終場面でかりんとう藤原を追い見る小川の目に、ふと見える「鹿」のことです。
そのような、幾重にも重なりあった空間の不思議さ、
そして、それらを移動するわれわれもまた、じつは非日常的な行為をくり返しているのだということ、
そんなことを、第10話という「物語の出口」で、ドラマ制作者は仕掛けたかったのかもしれない。
そんなふうにも思うのです。少なくとも、そんなふうに読み取っていい。
言い換えれば、ドラマから現実の間に、容易には戻れない迷路を用意したのかもしれない。
最終場面にあらわれた「鹿」(の幻影?)は、そのことを伝えたかったのではなかろうか、と。
(撮影:chief )
じつにじつに手の込んだ仕掛けがほどこされている。
その点だけは、このドラマにかんして間違いないことでしょう。
そして、じつはまだ誰にも解かれていない仕掛けも、たぶんドラマ「鹿男」にはある。
むしろ少数のユーザーたち(ドラマ「鹿男」の場合は視聴者ということになります)が、
「自分のためにつくられた」と信じ込むような作品は、往々にしてそういうものです。
たとえば、登場してからしばらくの間、村上春樹がそうでした。
しかし、いまや彼は、世界中でもっとも読まれている作家のひとりです。
つまり、「時代が彼に追いついた」のですね。
「鹿男」の場合、まだちょっと「時代」が追いつくのに早かった。
いや、早い、遅いというのは、単なるモノサシの当て方にすぎません。
しかし、そこに含まれた「何か」に、じつに多くのユーザーたちが反応した。
【補記:「ユーザーたち」を「ヘビーユーザーたち」と言い換えておきたいと思います。】
それこそが、今期ネットでもっとも盛り上がったといわれるこの作品の、
「視聴率」と「ブーム」の大きな乖離現象を解く鍵なのではないでしょうか。
Posted by び ん at 00:06│Comments(8)
│テレビドラマ評論(鹿男あをによし・Nのために・リバースなど)
この記事へのトラックバック
何とも不思議なテイストながら、視聴後感のいい、素敵なドラマでした。それは、ひとえに、藤原を演じる綾瀬はるかの存在感と魅力に尽きると言ってもいいと思います。
フジテレビ「鹿男あをによし」第10話(最終回):二つのキス〜冒険の終わりが恋の始まり【伊達でございます!】at 2008年03月22日 01:21
頑張れよ
先生
「鹿男あをによし 最終話」
予告の段階
で
堀田のキスの意味
は判ってしまったけれど
なまず
といった
両義的な生き物
は
古来から
神聖なもの扱い
されてきた
なまずの場...
先生
「鹿男あをによし 最終話」
予告の段階
で
堀田のキスの意味
は判ってしまったけれど
なまず
といった
両義的な生き物
は
古来から
神聖なもの扱い
されてきた
なまずの場...
「鹿男あをによし 最終話」【楽屋】at 2008年03月22日 08:33
あれだけ苦労した“目”を確保したけど、儀式はあっさり終了。
なんだかあっけなかったですね。リチャードもなぜか関係者のようにいましたけど。
なんだかあっけなかったですね。リチャードもなぜか関係者のようにいましたけど。
鹿男あをによし(3月20日)【今日感】at 2008年03月22日 09:26
やっぱり、赤シャツは 赤シャツだった〜〜〜〜教頭先生!!! 『あ〜みえても、野心家だからね〜〜』By下宿の女将さん@福原房江@鷲尾真知子 なんだか 『坊ちゃん』を感じますね...
「鹿男あをによし」2話【ice-coffee】at 2008年03月22日 10:14
「さぁ儀式を始めよう!」
小川は、堀田から受け取った"目"を草の上に置きます。
そして堀田がこの三角縁神獣鏡に水を注ぐと中央に満月が映りました。
卑弥呼が言ったそう...
鹿男あをによし vol.10 二つのキス〜冒険の終わりが恋の始まり【美味−BIMI−】at 2008年03月22日 10:43
★うらやましいぞ、小川隆信!
何と小川(玉木 宏)が道子(綾瀬はるか)とイト(多部未華子)とダブルキス!
ヒロインふたりとキスする最終回などドラマ史上なかったことであろう...
何と小川(玉木 宏)が道子(綾瀬はるか)とイト(多部未華子)とダブルキス!
ヒロインふたりとキスする最終回などドラマ史上なかったことであろう...
鹿男あをによし 最終話【平成エンタメ研究所】at 2008年03月22日 10:51
ドラマ「鹿男あをによし」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:玉木宏、綾瀬はるか、多部未華子、柴本幸、篠井英介、キムラ緑子、酒井敏也、鷲尾真知子、田...
「鹿男あをによし」レビュー【ドラマレビュー トラックバックセンター】at 2008年03月22日 11:35
「目だよ・・先生。
次の鎮めの儀式まで180年、私はこの力と共に生きる」鹿
「これで終わりか?」小川
「全て終ったよ、先生」鹿
みんなの顔に安堵と達成感の表情が・・・よかった...
次の鎮めの儀式まで180年、私はこの力と共に生きる」鹿
「これで終わりか?」小川
「全て終ったよ、先生」鹿
みんなの顔に安堵と達成感の表情が・・・よかった...
「鹿男あをによし」最終回【トリ猫家族】at 2008年03月22日 17:30
小川孝信(玉木宏)は、堀田イト(多部未華子)から受け取った“目”=銅鏡を、平城宮跡の朱雀門近くの草の上に置く。それを、藤原道子(綾瀬はるか)、小治田史明(児玉清)、鼠が...
「鹿男あをによし」最終話 〜汝の鹿を解くため、会いに行く〜【混沌と勇気日記。 〜新たなる勇ましき無秩序の世界〜】at 2008年03月22日 21:02
「鹿男あをによし」最終回面白かった〜!そして見た後にほのぼのと幸せな気分になれました。「鎮めの儀式」はあーっさり終わっちゃって、その後の小川先生と周りの人たちとの別れに重...
「鹿男あをによし」最終回【DorceVita】at 2008年03月23日 10:49
すんげぇ〜あっさり儀式が終わったんですけど・・・(-_-;)
鹿の目に光がハマって、「目だよ、先生!!」って。
なんじゃそりゃ。そのまんまじゃん。
ってかさ、鏡を壊そうとしたリチ...
鹿男あをによし 最終話【まったり☆てぃ〜たいむ】at 2008年03月23日 13:05
この記事へのコメント
カラーに気づいたのは最終回です(いかに真剣に見てなかったか(笑)バレバレ^^;
…っていくつ目かな(謎爆)
…っていくつ目かな(謎爆)
Posted by とんとんみーのりのり at 2008年03月22日 08:46
へ?モノクロだと思ってたんですか、のりのりさん(違う?笑)
いくつ目の「目」は、「目」ですね!(爆)
いくつ目の「目」は、「目」ですね!(爆)
Posted by び ん
at 2008年03月22日 10:01

こんにちは~~^^
TBありがとうございます~~
わたしのTB2話みてみてくださいね~
ご考察よろしく~(笑)
TBありがとうございます~~
わたしのTB2話みてみてくださいね~
ご考察よろしく~(笑)
Posted by ice at 2008年03月22日 10:18
iceさん、了解っ!
で、TBっていうのは、「とっても・びっくり」?(笑)
楽しみにうかがいます(^-^b
で、TBっていうのは、「とっても・びっくり」?(笑)
楽しみにうかがいます(^-^b
Posted by び ん
at 2008年03月22日 11:42

いつもながら奥の深い解釈に、驚かされます。
私はただ単に、ロケが観光客のいない早朝だと聞いていたので、光線の加減や、
時間のズレを色調でフォローしているものだと思っていました。
夢なら覚めて欲しい夢もあれば、いつまでも続いて欲しい夢もありますよね。
このドラマはどっちなんでしょう・・・・。
私はただ単に、ロケが観光客のいない早朝だと聞いていたので、光線の加減や、
時間のズレを色調でフォローしているものだと思っていました。
夢なら覚めて欲しい夢もあれば、いつまでも続いて欲しい夢もありますよね。
このドラマはどっちなんでしょう・・・・。
Posted by COLTVICH at 2008年03月22日 17:16
覚めたくもあり、覚めたくもなし、というところでしょうか・・・
COLTVICHさんのお近くも、ロケが多いのでは?
ロケ現場というのは夢ではなく現実で、
できれば、あまり見たくないものですね。
もちろん、そこから夢を立ち上げる方々のお手並みを楽しむ、
そんな見方もあると思うのですが^^
COLTVICHさんのお近くも、ロケが多いのでは?
ロケ現場というのは夢ではなく現実で、
できれば、あまり見たくないものですね。
もちろん、そこから夢を立ち上げる方々のお手並みを楽しむ、
そんな見方もあると思うのですが^^
Posted by び ん
at 2008年03月22日 17:33

色調も気付かないで、深読みもしてない迂闊者だったので、他のブロガーさんのを読むと、なるほど面白いですね〜。
うん、うん『ふと、まぎれこんでしまった異界の中』ですよね。
その異界の中に、私も入り込んで浮遊感を楽しめました。
何で、視聴率が悪いんでしょう?!これも『鹿男』の謎です...。
うん、うん『ふと、まぎれこんでしまった異界の中』ですよね。
その異界の中に、私も入り込んで浮遊感を楽しめました。
何で、視聴率が悪いんでしょう?!これも『鹿男』の謎です...。
Posted by あん at 2008年03月22日 22:53
たぶんおそらく、もう視聴率というモノサシが、
(意味がないとはいわないにしても)
それほど正確ではなくなっているのだと思います。
そういうことをとてもはっきりと示したという意味でも、
ちょっとこれまでにないドラマだったのだと思っています。
『ふと、まぎれこんでしまった異界の中』がどんなものだったのか、
まだまだ考えちまおうなどと思っていたり(笑)
(意味がないとはいわないにしても)
それほど正確ではなくなっているのだと思います。
そういうことをとてもはっきりと示したという意味でも、
ちょっとこれまでにないドラマだったのだと思っています。
『ふと、まぎれこんでしまった異界の中』がどんなものだったのか、
まだまだ考えちまおうなどと思っていたり(笑)
Posted by び ん
at 2008年03月23日 01:21

お返事が遅くなる場合があります。あしからず。