最終話を見る前に整理しておきたいことがある。
というか、ぼくにとっては「第9話を見る前に」であるが。
ひとつ前の記事に、こう書いた。
「このように、主要人物(6名)の名が水にかかわり、
そして、深瀬だけが、二文字ともに水とかかわる。
10年前の「事故」の現場には「雪」が降り積もり、
広沢が運転していた(はずの)車は「谷」底に転落していた。
そこには「浅」い「沢」(もしくは「河」)が流れていて、
横転した車は、(ガソリンが漏れて?)爆発した。
道路には、車の破片?とともに「血」の流れたあとがあり、
広沢が「酒」を飲んでいたことが判明するのを恐れて、
(教員試験の合格と入社内定を取り消されるのを恐れて)
谷原と浅見は、血痕の証拠を掻き出して、谷へと捨てる。」
さて、問題はその時、谷原が拾ったものである。
その時、事故現場の道路上で谷原が見つけたのが、
「30」という数字の入ったてんとう虫のキーホルダーであり、
それは(小笠原の調査によって)NPOの30周年を記念した、
個数限定のキーホルダーであることが判明している。
その一方で、事故の日、深瀬は広沢から、
非営利法人の試験を受けていたことを教えられる。
その合格通知の日が、「最後の一日」であった。
だれもがそう思うように、このキーホルダーが事件の鍵となる。
しかし、一方に以下のような事実がある。
2017年をさかのぼること10年前の事件の年が2007年、
さらにそこからさかのぼる30年前の1977年には、
じつは、「NPO」は、まだ日本のどこにも存在しなかった。
(日本にNPO=非営利法人が生まれたのは1998年のこと、
この年12月に施行された特定非営利法人促進法による。)
もちろん、日本にも非営利組織はそれ以前からあった。
促進法の設立に、1995年の阪神淡路大震災による、
日本で最初のいわゆる「災害ボランティア」の活動が、
大きくかかわっていたことは、よく知られている通りだ。
さらに、いわゆる「慈善団体」は、戦前から存在した。
しかし、2007年当時に「設立30年のNPO」は存在しない。
ここを、どう読み解くかが、「リバース」の鍵となるだろう。
2007年に、広沢は合否の連絡を待っている相手を、
「NPO」という言葉を用いて呼んだわけではない。
「非営利組織」とも「非営利法人」とも言っていない。
(それでも、示唆するところはそのような「組織」と
考えて間違いあるまい。)
「NPO」と言ったのは、2017年時点における小笠原で、
第8話の冒頭、深瀬と立ち食いそば屋「みちくさ」で、
湯気の出ていない冷えたそばを食べている時である。
だから、これは現時点で40年前を振り返った時に、
当時なかった名称を現代に「翻訳」して使ったとも取れる。
(ちなみに湯気が出ているのは鍋からであって丼ではなく、
彼らの持つ丼にあるのは、冷えてのび切ったそばなので、
「温かいそばを食べさせてあげなよ」と突っ込みたくなる。)
それでもこれは、「事故」の背景には、個人ではなく組織が、
存在していることを示す、重大な遺留品と考えるべきであり、
そう考えれば、「事故」は単なる転落事故を超えた「何か」、
そのようなメッセージを送るアイテムだと受け取らざるをえない。
そして、次にどうしても気にかかるのは、第6話、
深瀬と浅見が長野県の事故現場をひさしぶりに訪れ、
警察署(県警)で、かつての小笠原の同僚たちに面会する場面。
その時、階段をのぼりながら元同僚の警察官が口にする、
「あの冬は、その事故と窃盗事件で騒がしかった」という言葉。
深瀬が、「あの近くのホテルで貴重品盗まれたんですよね?」、
と問い、「そう。」と短く刑事が返す。
さらに、「犯人はつかまったんですか?」という浅見の問いに、
「つかまったよ。一網打尽だった」と、もう一人が答え、
この件にかんする一連の会話は終わる。
「一網打尽」という表現から、そこには集団が関与している。
そして、いくら大掛かりではあっても、窃盗事件であるならば、
(つまり傷害が含まれていないのであれば)刑期は最長で10年。
刑法235条には、そのように定められているが、
現実には、強盗罪でも、懲役3年から7年が70%を占めていて、
実際、懲役が10年になることは、判例からほとんどありえない。
単純な窃盗であれば、よほどの高額であっても刑期は数年だろうし、
人身に被害の及ぶ強盗であっても、ほとんどの場合は刑期7年以下。
(参照:
弁護士ドットコム)
(すでに消されているので残念ながら確認はできないのだが)
深瀬・広沢・浅見・谷原が村井の(親の)別荘に向かう時、
流れていたニュースでの注意喚起は、単なる窃盗とは、
レベルの違う切迫したニュアンスではなかったかと思う。
(「一網打尽」と呼ぶほどの集団であれば、そして、
その対象が「ホテル」であれば、おそらくそういうことになる。)
いずれにせよ、2017年には間違いなく彼らは出所している。
何らかのかたちで「事故」と「窃盗」がクロスしてしまい、
「一網打尽」にされた(はずの)窃盗の犯人(たち)が、
10年後に「事故」を調べ始めた深瀬たちに対して、
警告を送り続けることは、十分にあり得ることだろう。
このように考えてくると、小笠原がなぜ「干されたか」ということだ。
単なる窃盗団(強盗団)の事件であれば、所轄署の警察官が、
その仕事を辞めざるをえないほど追い込まれることは考えにくい。
背後に、県警を動かした、何らかの「力」を想定すべきだろう。
(あるいは、窃盗団がホテルで何を盗んだか、ということだが、
集団で盗むような「貴重品」に、どのようなものを想定すればいい?)
それが、大きな「モノ」であれば、道路(雪)の上に散らばっていた、
破片はクルマのものではなく、「品」であるということも考えられる。
(むしろ、クルマの破片が道路上に散乱することの不自然さは、
すでに見た通りなのだが、血痕が残るような乱闘や傷害が、
そこで行われたのだとすれば、車(の一部)が破壊される、
そのようなことも、おこりえた可能性がないわけではない。)
ただし、残る2回(第9話、最終話)で、そこまで話を広げるだろうか。
つまり、そうすることがドラマの完成度に資するであろうか・・・。
第8話まで、ていねいに「個人」を追ってきたドラマなので、
最終話まで、あくまでも「個」にこだわって作ると考えたい。
そうすると、これも第6話なのだが、その末尾近く、
深瀬が述懐する言葉が、どうしても耳に残る。
「(自分は)広沢が死んでいるのを、
ただぼんやり見ていただけだった。」
深瀬は、広沢を発見する前に雪の中で倒れて気を失ったのでは?
では、「死んでいるのを」「見ていた」という述懐は、一体何なのか?
道路に降り積もった雪で滑って(そうでなくとも)、
道路脇の谷底に転落したのであれば、
血痕は、道路上(雪の上)には残らない。
そして、道路上に、クルマの破片は残らない。
これは、あまりにもシンプルな「事実」だろう。
では、血痕や散乱した破片(?)は一体何なのか。
これらは、第8話までに回収されていない「謎」だ。
これらが、第9話において回収されるのか、
それとも、依然「謎」として最終話に残されるのか。
事故現場に最初に到着した谷原は内定取り消しを恐れ、
路面に残った血痕を削り取って、雪と共に谷底へと捨てる。
そこに追いついた浅見も、谷原に説得されて同じように、
教員の内定(教員の正式採用の場合、3月31日まで、
勤務校からの連絡は来ないのが通例ではあったが、
「内定」は教員試験の合格と理解しておこう。)が、
取り消されることを恐れて、谷原と行動を共にする。
そして、谷原は路面に落ちていたキーホルダーを見つけ、
それを血痕と一緒に谷底へと投げる。
一方、浅見は谷底で炎上したクルマのそばから、
村井(らしき男)が逃げるように去っていく姿を見る。
村井は、浅見からの電話を受けてタクシーから降り、
谷底に転落している(自分の)クルマを発見する。
そして、携帯電話で父親(県会議員)に電話をする。
電話を受けた父親は保身のために(息子のクルマを、
酒に酔った友人が運転して事故を起こしたという、
事実から「酒に酔っていた」という要素を隠蔽するため)、
電話口から「火をつけろ」と息子=村井に指示する。
村井は、「できない」、さらに「できるわけないだろ」と答え、
しばらくためらったあと、「助けなきゃ」と足を踏み出した時、
まさにその時、(ガソリンに引火して?)クルマは爆発する。
そして、現場から逃げつつあるところを浅見に目撃される。
このように、谷原・浅見・村井の事故現場での行動が、
第2部(6話以降)で明らかになってきたというのに、
深瀬だけは、この事故の「現場」に姿を現わさない。
よしんば、雪の中で意識を失い救助されたという、
それが「事実」であったにしても、バランスが悪い。
言い換えれば、そこだけがあまりに「空白」すぎる。
まだ、気になるところは、いくつかあるが、
ここまで書いておいて、第9話を見ることにしよう。
その結果、少しは安心して最終話に進めるか、
あるいは、もう少しバタバタしないといけないか。
それは、おたのしみということで・・・。
(あとは、午後のノルマは病院に行くくらいなので、
いずれにせよ、夜の10:00には間に合うだろう。
いやはや、ずいぶん楽しませてもらっています・汗)
あ、そうそう、
スージーさんに本を送らなければ。
「まだ、送ってないんかい!」と突っ込まれそうだが・・・。
【参照:過去の『リバース』関連記事】
6月6日 「
ドラマ「リバース」にクギヅケ!! (「テレビやめた」宣言は、いったいどうなった!?)」
6月7日 「
「リバース」(TBS系・金曜夜10時~)から、ますます目が離せない・・・!」
6月16日 「
ドラマ「リバース」の帰趨 ・・・ 「水」をめぐる物語のメッセージを求めて。」
こちら ☟ は、関連があるのか、ないのか・・・
6月10日 「
ストロベリームーンは、もちろん見たのだけれど、リバースの第9話は、まだ見ていない・・・」