日本で非営利法人(NPO)が設立されるのは、1998年に至ってからであること。(ドラマ「リバース」最終話を前に。)

び ん

2017年06月16日 12:55

最終話を見る前に整理しておきたいことがある。

というか、ぼくにとっては「第9話を見る前に」であるが。


ひとつ前の記事に、こう書いた。


「このように、主要人物(6名)の名が水にかかわり、

そして、深瀬だけが、二文字ともに水とかかわる。


10年前の「事故」の現場には「雪」が降り積もり、

広沢が運転していた(はずの)車は「谷」底に転落していた。

そこには「浅」い「沢」(もしくは「河」)が流れていて、

横転した車は、(ガソリンが漏れて?)爆発した。


道路には、車の破片?とともに「血」の流れたあとがあり、

広沢が「酒」を飲んでいたことが判明するのを恐れて、

(教員試験の合格と入社内定を取り消されるのを恐れて)

谷原と浅見は、血痕の証拠を掻き出して、谷へと捨てる。」


さて、問題はその時、谷原が拾ったものである。


その時、事故現場の道路上で谷原が見つけたのが、

「30」という数字の入ったてんとう虫のキーホルダーであり、

それは(小笠原の調査によって)NPOの30周年を記念した、

個数限定のキーホルダーであることが判明している。


その一方で、事故の日、深瀬は広沢から、

非営利法人の試験を受けていたことを教えられる。

その合格通知の日が、「最後の一日」であった。


だれもがそう思うように、このキーホルダーが事件の鍵となる。

しかし、一方に以下のような事実がある。


2017年をさかのぼること10年前の事件の年が2007年、

さらにそこからさかのぼる30年前の1977年には、

じつは、「NPO」は、まだ日本のどこにも存在しなかった。

(日本にNPO=非営利法人が生まれたのは1998年のこと、

この年12月に施行された特定非営利法人促進法による。)


もちろん、日本にも非営利組織はそれ以前からあった。

促進法の設立に、1995年の阪神淡路大震災による、

日本で最初のいわゆる「災害ボランティア」の活動が、

大きくかかわっていたことは、よく知られている通りだ。

さらに、いわゆる「慈善団体」は、戦前から存在した。


しかし、2007年当時に「設立30年のNPO」は存在しない。

ここを、どう読み解くかが、「リバース」の鍵となるだろう。

2007年に、広沢は合否の連絡を待っている相手を、

「NPO」という言葉を用いて呼んだわけではない。

「非営利組織」とも「非営利法人」とも言っていない。

(それでも、示唆するところはそのような「組織」と

考えて間違いあるまい。)


「NPO」と言ったのは、2017年時点における小笠原で、

第8話の冒頭、深瀬と立ち食いそば屋「みちくさ」で、

湯気の出ていない冷えたそばを食べている時である。

だから、これは現時点で40年前を振り返った時に、

当時なかった名称を現代に「翻訳」して使ったとも取れる。


(ちなみに湯気が出ているのは鍋からであって丼ではなく、

彼らの持つ丼にあるのは、冷えてのび切ったそばなので、

「温かいそばを食べさせてあげなよ」と突っ込みたくなる。)


それでもこれは、「事故」の背景には、個人ではなく組織が、

存在していることを示す、重大な遺留品と考えるべきであり、

そう考えれば、「事故」は単なる転落事故を超えた「何か」、

そのようなメッセージを送るアイテムだと受け取らざるをえない。


そして、次にどうしても気にかかるのは、第6話、

深瀬と浅見が長野県の事故現場をひさしぶりに訪れ、

警察署(県警)で、かつての小笠原の同僚たちに面会する場面。


その時、階段をのぼりながら元同僚の警察官が口にする、

「あの冬は、その事故と窃盗事件で騒がしかった」という言葉。


深瀬が、「あの近くのホテルで貴重品盗まれたんですよね?」、

と問い、「そう。」と短く刑事が返す。

さらに、「犯人はつかまったんですか?」という浅見の問いに、

「つかまったよ。一網打尽だった」と、もう一人が答え、

この件にかんする一連の会話は終わる。


「一網打尽」という表現から、そこには集団が関与している。

そして、いくら大掛かりではあっても、窃盗事件であるならば、

(つまり傷害が含まれていないのであれば)刑期は最長で10年。


刑法235条には、そのように定められているが、

現実には、強盗罪でも、懲役3年から7年が70%を占めていて、

実際、懲役が10年になることは、判例からほとんどありえない。

単純な窃盗であれば、よほどの高額であっても刑期は数年だろうし、

人身に被害の及ぶ強盗であっても、ほとんどの場合は刑期7年以下。

(参照:弁護士ドットコム


(すでに消されているので残念ながら確認はできないのだが)

深瀬・広沢・浅見・谷原が村井の(親の)別荘に向かう時、

流れていたニュースでの注意喚起は、単なる窃盗とは、

レベルの違う切迫したニュアンスではなかったかと思う。

(「一網打尽」と呼ぶほどの集団であれば、そして、

その対象が「ホテル」であれば、おそらくそういうことになる。)


いずれにせよ、2017年には間違いなく彼らは出所している。

何らかのかたちで「事故」と「窃盗」がクロスしてしまい、

「一網打尽」にされた(はずの)窃盗の犯人(たち)が、

10年後に「事故」を調べ始めた深瀬たちに対して、

警告を送り続けることは、十分にあり得ることだろう。


このように考えてくると、小笠原がなぜ「干されたか」ということだ。

単なる窃盗団(強盗団)の事件であれば、所轄署の警察官が、

その仕事を辞めざるをえないほど追い込まれることは考えにくい。

背後に、県警を動かした、何らかの「力」を想定すべきだろう。


(あるいは、窃盗団がホテルで何を盗んだか、ということだが、

集団で盗むような「貴重品」に、どのようなものを想定すればいい?)


それが、大きな「モノ」であれば、道路(雪)の上に散らばっていた、

破片はクルマのものではなく、「品」であるということも考えられる。

(むしろ、クルマの破片が道路上に散乱することの不自然さは、

すでに見た通りなのだが、血痕が残るような乱闘や傷害が、

そこで行われたのだとすれば、車(の一部)が破壊される、

そのようなことも、おこりえた可能性がないわけではない。)


ただし、残る2回(第9話、最終話)で、そこまで話を広げるだろうか。

つまり、そうすることがドラマの完成度に資するであろうか・・・。





第8話まで、ていねいに「個人」を追ってきたドラマなので、

最終話まで、あくまでも「個」にこだわって作ると考えたい。


そうすると、これも第6話なのだが、その末尾近く、

深瀬が述懐する言葉が、どうしても耳に残る。


「(自分は)広沢が死んでいるのを、

ただぼんやり見ていただけだった。」


深瀬は、広沢を発見する前に雪の中で倒れて気を失ったのでは?

では、「死んでいるのを」「見ていた」という述懐は、一体何なのか?


道路に降り積もった雪で滑って(そうでなくとも)、

道路脇の谷底に転落したのであれば、

血痕は、道路上(雪の上)には残らない。

そして、道路上に、クルマの破片は残らない。


これは、あまりにもシンプルな「事実」だろう。

では、血痕や散乱した破片(?)は一体何なのか。


これらは、第8話までに回収されていない「謎」だ。

これらが、第9話において回収されるのか、

それとも、依然「謎」として最終話に残されるのか。


事故現場に最初に到着した谷原は内定取り消しを恐れ、

路面に残った血痕を削り取って、雪と共に谷底へと捨てる。

そこに追いついた浅見も、谷原に説得されて同じように、

教員の内定(教員の正式採用の場合、3月31日まで、

勤務校からの連絡は来ないのが通例ではあったが、

「内定」は教員試験の合格と理解しておこう。)が、

取り消されることを恐れて、谷原と行動を共にする。


そして、谷原は路面に落ちていたキーホルダーを見つけ、

それを血痕と一緒に谷底へと投げる。

一方、浅見は谷底で炎上したクルマのそばから、

村井(らしき男)が逃げるように去っていく姿を見る。


村井は、浅見からの電話を受けてタクシーから降り、

谷底に転落している(自分の)クルマを発見する。

そして、携帯電話で父親(県会議員)に電話をする。

電話を受けた父親は保身のために(息子のクルマを、

酒に酔った友人が運転して事故を起こしたという、

事実から「酒に酔っていた」という要素を隠蔽するため)、

電話口から「火をつけろ」と息子=村井に指示する。


村井は、「できない」、さらに「できるわけないだろ」と答え、

しばらくためらったあと、「助けなきゃ」と足を踏み出した時、

まさにその時、(ガソリンに引火して?)クルマは爆発する。

そして、現場から逃げつつあるところを浅見に目撃される。


このように、谷原・浅見・村井の事故現場での行動が、

第2部(6話以降)で明らかになってきたというのに、

深瀬だけは、この事故の「現場」に姿を現わさない。

よしんば、雪の中で意識を失い救助されたという、

それが「事実」であったにしても、バランスが悪い。

言い換えれば、そこだけがあまりに「空白」すぎる。



まだ、気になるところは、いくつかあるが、

ここまで書いておいて、第9話を見ることにしよう。


その結果、少しは安心して最終話に進めるか、

あるいは、もう少しバタバタしないといけないか。

それは、おたのしみということで・・・。


(あとは、午後のノルマは病院に行くくらいなので、

いずれにせよ、夜の10:00には間に合うだろう。

いやはや、ずいぶん楽しませてもらっています・汗)


あ、そうそう、スージーさんに本を送らなければ。

「まだ、送ってないんかい!」と突っ込まれそうだが・・・。



【参照:過去の『リバース』関連記事】

6月6日 「ドラマ「リバース」にクギヅケ!! (「テレビやめた」宣言は、いったいどうなった!?)」

6月7日 「「リバース」(TBS系・金曜夜10時~)から、ますます目が離せない・・・!

6月16日 「ドラマ「リバース」の帰趨 ・・・ 「水」をめぐる物語のメッセージを求めて。

こちら ☟ は、関連があるのか、ないのか・・・

6月10日 「ストロベリームーンは、もちろん見たのだけれど、リバースの第9話は、まだ見ていない・・・



関連記事