たまったツケの支払いに、勤め先近くの本屋に行った。
たまったツケの半分ほどを払い、ちょっと大きな顔で立ち読みをした。
すると、岡野信子氏著『屋号語彙の開く世界』(和泉書院、2005年)があった。
(
和泉書院のHPより新刊案内)
日本各地の屋号を収集・分類し、そこから見えてくる共同体社会の姿を簡潔に描いた好著だ。
『屋号語彙の総合的研究』(武蔵野書院、2003年)という大著をもつ著者だけに、
その考察には「屋号」という記号をとおして旧来のムラ社会を見通す深さがある。
さて、その中に(ページ数としてはわずかであるが)沖縄の事例研究もあった。
それを読んで、即座に思い出したのは、かつて書いた「すーまぬめぇ」のこと。
http://bin.ti-da.net/e785526.html 2006年5月9日「すーまぬめぇ」
そこでは、とあるHPに載っていたエピソードをヒントに、
「すーまぬめぇ」という耳慣れない言葉が「城間の前」という意味の屋号だと推定したのだ。
ところが、岡野さんの『屋号語彙が開く世界』では、
かなりの数上げられた沖縄の屋号の中に、
「○○の前」というものは見当たらないのである。
それどころか、沖縄の屋号は、「元屋(ムートーヤ)」を基本にして、
その前に「新(ミー)」だとか「前(メー)」「後(クシ)」などを冠していくのが基本だという。
それも、「「前」は前につける」というのは、基本法則の2番目に出てくる基本中の基本なのだ。
とすると、もし「城間」が「元屋」だったとして(そうでなくてもよいが)
沖縄の屋号形成の基本法則に則(のっと)れば「前城間」になるはずなのだ。
つまり、屋号であれば「城間」を「すーま」と読んだとして、「めーすーま」が基本形となる。
ところで、「城間」は「すーま」ではなく「ぐすくま」と読むのではないか?
いや。それはここでの話題ではないから置いておくといしても、
「城間の前」は、「前城間」に対して完全に分が悪い。
というわけで、「すーまぬめぇ」の謎解き、またふりだしに戻ってしまった。
え?・・・「謎」だなんて大げさ?
いえいえ、馬鹿にしちゃいけません。すーまぬめぇのそば、むちゃくちゃうまい!
は?・・・話がはずれましたか?(^-^ゞ
(香川県高松城の石垣)
『屋号語彙が開く世界』を読むにつけ(立ち読みでしたが・汗)
屋号というのは、共同体が積み上げる石垣のようだと強く感じた。
前や後ろに、上に下に、ひとつひとつ積み上げることによって、
その共同体の存在を、より堅固なものとして行く。
そして、石垣の積み方に基本的・原則的なルールがあるように、
屋号の名づけにも、厳格な基本的ルールがあると感じたのだ。
そのようなルールをはずれて「城間の前」という屋号が存在しうるのか。
もちろん、あらゆる物事には例外がある。
岡野さんも、沖縄のすべての屋号を調べたわけではない。
だから、「すーまぬめぇ(城間の前)」が屋号であった可能性はゼロではない。
たとえば、すでに「めーすーま」が存在して、あえて区別をする必要があった、など。
しかし、もしそのことを立証しようとするならば、ただひとつの口伝えでは完全に不十分だはず。
ともあれ、探偵団としては、もう一度「すーまぬめぇ」に行ってみるところから始めるしかない。
ハーリーさん、よろしく!!(笑)
【追記】
すでに、5月9日の「すーまぬめぇ」に対して、
源氏パイさんの次のようなコメントがあったので付記しておく。
スーマヌメーは屋号ですか!
まーすや-のメーからきた物と、思ってました。
「まーすやー」、つまり「塩屋」のことであろう。
まーすまーすおもしろくなってきた「すーまぬめぇ」!( ̄0 ̄;;