すーまぬめぇの謎、再び

び ん

2006年08月03日 18:31

たまったツケの支払いに、勤め先近くの本屋に行った。

たまったツケの半分ほどを払い、ちょっと大きな顔で立ち読みをした。


すると、岡野信子氏著『屋号語彙の開く世界』(和泉書院、2005年)があった。

和泉書院のHPより新刊案内

日本各地の屋号を収集・分類し、そこから見えてくる共同体社会の姿を簡潔に描いた好著だ。

『屋号語彙の総合的研究』(武蔵野書院、2003年)という大著をもつ著者だけに、

その考察には「屋号」という記号をとおして旧来のムラ社会を見通す深さがある。


さて、その中に(ページ数としてはわずかであるが)沖縄の事例研究もあった。

それを読んで、即座に思い出したのは、かつて書いた「すーまぬめぇ」のこと。

http://bin.ti-da.net/e785526.html 2006年5月9日「すーまぬめぇ」


そこでは、とあるHPに載っていたエピソードをヒントに、

「すーまぬめぇ」という耳慣れない言葉が「城間の前」という意味の屋号だと推定したのだ。


ところが、岡野さんの『屋号語彙が開く世界』では、

かなりの数上げられた沖縄の屋号の中に、

「○○の前」というものは見当たらないのである。

それどころか、沖縄の屋号は、「元屋(ムートーヤ)」を基本にして、

その前に「新(ミー)」だとか「前(メー)」「後(クシ)」などを冠していくのが基本だという。

それも、「「前」は前につける」というのは、基本法則の2番目に出てくる基本中の基本なのだ。


とすると、もし「城間」が「元屋」だったとして(そうでなくてもよいが)

沖縄の屋号形成の基本法則に則(のっと)れば「前城間」になるはずなのだ。

つまり、屋号であれば「城間」を「すーま」と読んだとして、「めーすーま」が基本形となる。


ところで、「城間」は「すーま」ではなく「ぐすくま」と読むのではないか?

いや。それはここでの話題ではないから置いておくといしても、

「城間の前」は、「前城間」に対して完全に分が悪い。


というわけで、「すーまぬめぇ」の謎解き、またふりだしに戻ってしまった。

え?・・・「謎」だなんて大げさ?

いえいえ、馬鹿にしちゃいけません。すーまぬめぇのそば、むちゃくちゃうまい!

は?・・・話がはずれましたか?(^-^ゞ



(香川県高松城の石垣)

『屋号語彙が開く世界』を読むにつけ(立ち読みでしたが・汗)

屋号というのは、共同体が積み上げる石垣のようだと強く感じた。

前や後ろに、上に下に、ひとつひとつ積み上げることによって、

その共同体の存在を、より堅固なものとして行く。


そして、石垣の積み方に基本的・原則的なルールがあるように、

屋号の名づけにも、厳格な基本的ルールがあると感じたのだ。

そのようなルールをはずれて「城間の前」という屋号が存在しうるのか。


もちろん、あらゆる物事には例外がある。

岡野さんも、沖縄のすべての屋号を調べたわけではない。

だから、「すーまぬめぇ(城間の前)」が屋号であった可能性はゼロではない。

たとえば、すでに「めーすーま」が存在して、あえて区別をする必要があった、など。

しかし、もしそのことを立証しようとするならば、ただひとつの口伝えでは完全に不十分だはず。


ともあれ、探偵団としては、もう一度「すーまぬめぇ」に行ってみるところから始めるしかない。

ハーリーさん、よろしく!!(笑)


【追記】

すでに、5月9日の「すーまぬめぇ」に対して、

源氏パイさんの次のようなコメントがあったので付記しておく。

スーマヌメーは屋号ですか!

まーすや-のメーからきた物と、思ってました。


「まーすやー」、つまり「塩屋」のことであろう。

まーすまーすおもしろくなってきた「すーまぬめぇ」!( ̄0 ̄;;